中田 緋 & 高津珈琲

100年生き続けてきた日本家屋と極細の針金で編まれた物語世界の出会い

住宅街にある古い大きな民家を改装した喫茶店「高津珈琲」。通りから緑濃い庭に入ると、色鮮やかにツツジが咲く先に立派な瓦屋根の建物が見えます。
広い玄関からスリッパで上がると、梁のある高い天井。和箪笥や和文机などが置かれた古き良き日本家屋といった趣の中にゆったりテーブルが配置され、モダンなジャズが流れる空間です。
高津珈琲はオーナーの甥にあたる二人の兄弟が店を切り盛りしています。お話をうかがうのは、経営を任されているお兄さんの江野澤雅さん。相手は、硬質なワイヤーをレースのように編んでドレスなどの立体作品を作っている中田緋さん。この二人がどう距離を縮め、何をしようとしているかなどをうかがいました。

江野澤
高津珈琲は5月9日にめでたく3 周年を迎えました。徐々に売り上げも伸び、お客さんも増えてきました。大正の頃に建てられ、築100 年くらいになるという実家を改装してはじめました。
実際に住んでいた当時は見えていなかったのですが、店舗にするにあたって天井を高くし、当時の梁などを活かしたつくりにしました。
最初は母と弟の二人でスタートしましたが、現在はホール担当の僕とキッチン担当の弟と二人で営業しています。珈琲はここでは焙煎していませんが、茂原にある工房から豆を仕入れています。弟が作るケーキはシンプルなケーキととシフォンケーキなどが中心。オムライスやサンドイッチなどしっかりお食事もしていただけます。

中田
デザインの専門学校を卒業してすぐに広告制作会社に勤めていました。仕事の中ではどうしても自己表現ができない部分があり、プライベートでは絵を描区などしていろいろ模索していました。
結局、私は絵で食べていくといって一度会社を辞めたのですが、2年近く、知り合いからイラストの仕事をもらったりして細々とやってましたが、貧乏生活に耐えられず(笑)再就職。仕事で忙しい日々を送りながらも「自分の表現」を探し続け、そこで始めたのが「針金を編む」という表現方法でした。貧乏生活をしていた時に服のリメイクをたくさんしていて、手芸なども好きだったので、変わった素材を編んだら面白いかなあというところで。針金も真鍮やステンレスなどいろいろな素材を試してみました。

ーおとぎ話や聖書の世界、など琴線に触れるものを題材に立体作品を作られているそうですね。

中田
針金を編み始めた頃からずっと頭の中にイメージしていたのは、幼い頃から好きだったアンデルセンの童話「白鳥の王子」のヒロインの姿でした。実は、イラクサを編むその姿に、自身を重ね合わせているところがあります。ほかにも「自己犠牲」をテーマにした物語がとても好きなんです。
最近は自分の作品展示だけではなく、ワークショップやイベントをやってほしいと言われることがあり、いろいろな素材を編むような参加型の展開を考えるようになりました。
また、去年の夏、仲間とのグループ展で、着ることのできる針金のドレスを作りました。
ここでも刺激をもらい、みんなで参加できる形で作品を一緒に作っていくのもありなのかなと。一般に、アートは少し敷居の高いイメージ、柵の外から遠目に見るようなものと思われていないでしょうか。そうではなく、いろいろな人が楽しめるアートというものを作っていきたい、幅広い年齢層の方とワイワイやったりしたら本当に楽しいだろうなと思い始めています。

地元で愛される、野菜直売所のあるカフェ

江野澤
その意味では、高津珈琲の客層は幅広いです。お客様は主婦の方が多いですが、休日になれば家族連れ、小さいお子さんからおじいちゃん、おばあちゃんもうみんなで来ていただいたり、普通に若い男性が一人で来店してコーヒーを飲んでパソコンを開いて…スタバみたいに使っていただいています。いろいろな人が思い思いに過ごしていただければいいのかなと考えています。

中田
私の印象では古民家カフェというより農家カフェですね(笑)
八千代市のこの場所だからこそできることなのかな。いわゆる古民家って使われなくなったものをリノベーションするようなものを想像しますが、ここはずっと生きている家ですよね。他の古民家スタイルとは違って面白いと思うんです。このロゴの雰囲気もいいですね。

ーロゴのジャパニーズモダンな女性のイラストは地元の神社にちなんだ「高津姫」をイメージしているんですよね。
お二人は八千代とはどんな関わりがあるのでしょう。

江野澤
うちの家系はこの土地で歴史が古く、分家もたくさんあります。代々農家で、野菜を作るのがとてもうまいです!
ちなみに最近また直売所に野菜が並び始めましたが、今はスナップエンドウや小松菜など。これから夏になればミニトマトなどが並びます。東京で一人暮らしを考えたころもありましたが、結局ずっと地元にいて、やはりこの土地に愛着がありますね。

中田
生まれは流山市です。学校を卒業してから15年近く都内に住んでいたのですが、子どもが生まれるタイミングで、八千代に引っ越して来ました。田舎からまた田舎へ来たなーと思い、ブルーになった頃もありましたが、むしろ今は、それを楽しめています。のんびりした環境で、娘と同世代の子どもも多いので子育てしやすいですね。
(ここで八千代市に縁の深い事務局の3人も交えて、小学校の話や近所の商店の話で大いに盛り上がり脱線…)

江野澤
八千代市は住みやすいところだと思います。喫茶店で言えば、ジロー珈琲や星野珈琲なども増えましたね。たまに利用しています。正直、コメダ珈琲が一番入りやすいです(笑)うちの店は逆に入りにくいと思うんですけど。

中田
高津珈琲ははじめはちょっと入りにくくても、一度来た人はリピーターになるんじゃないかと思います。机の間隔が広いので、店員さんが近くて落ち着かないようなことはないですね。

ー地元の方に愛されている感じですね。大人のためのくつろげる空間で、遠くからわざわざ来る価値がある気がします。ところでお二人がこの企画に参加したのはどうしてなのでしょうか。

 

半信半疑の参加、伝わってきた本気度

江野澤
去年の夏頃からお客様を呼ぶことについて思い悩んで、闇の中にいたところに(笑)、話をいただいて。
最初は宣伝目的だったんですが、4 月の全体ミーティングの時に同業者の方とあったり作家さんとあって話したりしているうちにもっとちゃんとしたいなと思い始めました。中途半端じゃなく、みんなで協力していい展示を成功させたいという考えに変わって来ています。
作家さんのやりたいこと、表現したいことをしてもらって、僕はうちの店の普段のお客さんをびっくりさせないように、珈琲を飲む目的で来たお客さんも楽しめるように、うまく噛み合えるように調整していきたいです。

ー当初は喫茶店チームと作家チームに分かれて打ち合わせしていました。4 月の全体ミーティングでほぼ全員が顔を合わせ、カップルの組み合わせも発表になりましたね。何が変化のきっかけだったんでしょうか。

江野澤
喫茶店の中では僕が一番若くて少し異質かなと遠慮していた部分もありました。それが、全体ミーティングで会った作家陣の本気度がすごくて、真剣さに影響されました。それまでは正直、半信半疑で。ついていっていいんだろうかと思っていたところもありました(笑)

中田
私もその日、高津珈琲の江野澤さんとの組み合わせに、最初は若くて飄々としているように見えて大丈夫かなと思っていましたが…後日打ち合わせの際には、作品にちなんだメニューなどを提案していただきました。すごーく嬉しくて、その日はスキップして帰りました!

ー仲が深まってますね。そのメニューについては二人の間で面白そうなプランが進んでいるのですが、今はまだ内緒にしておきましょう。今日は実際に天井の梁からドレスを吊るしていただきました。中田さんはどんなものを展示しようとしているのですか?

来て見て触れて、物語を編み込んだ作品を感じてほしい

中田
大きい作品ではワイヤーで編んだドレスを天井の梁から下げて展示しようと考えています。今日持ち込んだこの作品は、4年前に亡くなった祖母へのオマージュとして制作したものです。祖母はクリスチャンで、自分を厳しく律し、私のような孫たちも可愛がるだけでなくきちんと諭す人でした。人生は波乱に満ちていましたが、とても強くて気丈に見えました。私にとって、とても大きな存在だった、祖母の人生の意味を考えるんです。言葉にはしなかったけれど、もしかしたら、苦しくて、辛いものだったかもしれない…そんな祖母のことを形にしたいと。凛として知的ですが、でも手はつながっていて不自由。その時代の女性ならではの不自由さやキリスト教的な戒律で自らを縛っていたのかもしれない。綺麗なだけでなく、その中の厳しさも表現したいと思いました。この作品は触っても、中に入ってもらったりしてもいいと思っています。キラキラして見えるけれど、触ると重かったり、光の加減で様子が違ったり、素材感がわかります。

ー写真で見るのではなくこの場に来て触れてこそ、重さや素材感などわかることがあるのですね。お客様にも触れて、自分で入るなどして感じていただきたいですね。もちろん撮影も可能です。

中田
せっかくなのでお庭にもいくつか作品を置こうと思っています。スポットライトを当てたり、窓から見えても面白いでしょうね。営業時間外に、みんなで色々な素材を編んでみるようなワークショップもやりたいです。

ーえー、まだまだ、スイーツのアイデア、お茶とワークショップのセットなど話題は尽きないようですが。
秋までにまだ練る時間はあるので…最後に、今の時点で、お客様向けに見所を一言お願いできますか?

江野澤
企画に合わせたメニューを用意しますので、楽しみにしてほしいです。いつもの古民家カフェをまた別の雰囲気で楽しんでもらえたらいいですね。僕もお客様の反応が楽しみです。

中田
店内だけでなく庭や建物全体に点在する作品を探すような宝探しのような雰囲気を楽しんでいただけたらと思っています。ホームページでも随時経過を更新していくので、見てください。

ーありがとうございました。どんな空間になるのか、待望のスイーツは生まれるのか?どこまで発展するのかが楽しみですね。Facebook やホームページで追いかけていきますので、皆さんもご期待ください。

アーティスト情報

作家名:中田 緋

ウェブサイト:https://www.akenakata-wireworks-art.com

カフェ情報

店舗名:高津珈琲

ウェブサイト:http://takatsucoffee.main.jp

住所:千葉県八千代市高津527-1

電話:047-450-2963

営業時間:営業時間 9:00~18:00(LO17:30)  定休日 月・火

千葉県八千代市高津の古民家カフェ